Quatre Saisons ~絵本と ことばと 恋バナと~

昔々、ある所に"アラン"という名の怠け者の子供がいました。 その子は、大人になると洋書の絵本屋になりましたが、宣伝も商売もうまくありません。 ある日、こわ~い鬼から言われました。「アラン、せめてブログぐらい書いて、自分の店を売り込め!でないと、おまえを食っちゃうぞ!」と。 アランは「え~、めんどくさ~い」と思ったのですが、食べられちゃっては大変です。 そんなわけで、ブログで自分とお店のことを紹介しなければならなくなったアランは…

カテゴリ: 『春よ…来い!』



「春はいつ来るの?」
 
「まだ冬にもなっていないのに 気の早いことだね」

「だって…」

「大丈夫、きっと春は来るから。 冬を越えたすべての人のところにね」

「わたしのところにも?」

「うん、君のところにも。 冬を越えれば…必ず」

「じゃあ、がんばってみる…ね!」




紙ふうせん「冬が来る前に」

冬が来る前に
もう一度
あの人と
めぐり会いたい



風邪などひかぬよう
暖かくしてお休みください。
     (アラン)



 











 



君と
初めて逢(あ)ったのは

晴れた
土曜の午後だったね

明るい日差しの下
陽気な さざめきの中にいた

皆(みな)と一緒に
私も 君も

   ♥

そして
初めて言葉を交わした

その時
君は
少し お澄(す)まし顔

温(あたた)かな風に
髪を靡(なび)かせ

すぐに

身を翻(ひるがえ)して
君は
何処(いずこ)かへと

天女(てんにょ)が
失くした羽衣(はごろも)を
探すが如(ごと)く



まだ仕事が
残っていたから?

   ♥

しばらくして
のぞいてみた
事務所の中

日が傾き
薄暗くなった
室内には
影ひとつ

その華奢(きゃしゃ)な
現身(うつしみ)を
紺の制服に包み

窓辺の椅子に
腰掛けて

夕暮れの空を
ひとり
見つめていたのは
君だった

身動(みじろ)ぎもせず
ただ
じっと
見つめていた

窓の外を

暮れなずむ空を

   ♥

私は
そっと
君の傍(かたわ)らに立つ

「何か見えるのかい?」

振り返った君は
虚(うつ)ろな表情で
私を
見る

私も また
黙って
見つめ返す

君の瞳を


不思議な静けさの中
見つめ続ける

まるで

月からのお迎えに
君が
連れ去られないようにする
が如く

あるいは
西の彼方に
夕陽と ともに
消え入りそうな
君をつなぎとめる為に・・・







ふきのとう「柿の実色した水曜日」



覚えてるかな
逢った日の
空と山の色
柿の実色した水曜日
初めて君を見た
初めて恋をした




 

013
Hans Christian Andersen & Josef Paleček / Thumbelina


数日後

私が

事務所に入ろうとすると

ちょうどその時

中から出てきた

君は

私の前に立ちはだかり

じっと

見つめてきたのだった


私の顔を

私の目を

食い入るように

しげしげと

丸い大きな瞳で



     ♥


「俺の顔に 何かついてる?」

「ううん、何にも」

交わした言葉は

ただそれだけ

その振る舞いには

どんな意味がある?

私を値踏み?

それとも

興味津々?


結局

私は

その日 一日

仕事が全く

手につかず…


     ♥


でも

今 思えば

君の様子は

幼い子供のようでもあった

無邪気(むじゃき)で

怖(おそ)れを知らぬ

振る舞い

少女

まだ恋を知らない

少女の









ZARD 「IN MY ARMS TONIGHT」


熱く見つめて

夢を見させて
時間を止めて

いつも強がっていたの
あなた困らせたくて






 

img_20160206-125745
Olof Landström, Lena Landström / Bu und Bä gehen auf ein Fest


君は言う

「違う課なのに

よくうちの課に来ますね。
ヒマなんですか?」

ギクッ!

「い、いや

忙しいんだけどさ…
こっちの課の
仕事の進捗状況は
どうかなと思ってね…
うちの課の方も
たいへんなんだけどもさ
そこは
うまくやりくりして
ヒマをつくって
来てるわけなんだよ」

「どうして?」

「え、えっ…」

君は
私の狼狽(ろうばい)

お構いなしに
を続ける
真面目(ま
じめ)な顔して

「ヒマって
どうやって作るんですか?」


「どうやって って…」

返す言葉が見つからない

沈黙ごまかすために
ポケットの中にあった

メンタル バランス チョコの
赤い小箱を
取り出し
ひと粒
口に放り込む

その間
ずっと
君の視線は
チョコの箱に注がれてる

「欲しそうな目してるね。
ひとつ あげようか?」

君は
黙ってうなずきながら
手のひらを
差し出す

そこに
のせてあげる
一粒のチョコ

手の上にのった
チョコから
徐々に
視線を上げる君

私の視線と
交わる
君の視線

そして
君の笑顔が
ゆっくりゆっくり
花開いていった

まるで
映画の
スローモーションのように



 

欅坂46 「二人セゾン」

花のない桜を見上げて
満開の日を想ったことはあったか?

君はセゾン
僕の前に現れて

君はセゾン
日常を輝かせる

二人セゾン
春夏で恋をして

二人セゾン
秋冬で去っていく

春夏秋冬
生まれ変われると

別れ際
君に教えられた


 
________________________________

お仕事に忙殺される
あなたを

私の紡ぐ物語が
一時でも
癒(いや)せたなら

一粒の
チョコのように
   (アラン)



 
↑ 事務的な作業による一時的・心理的なストレスを低減する
メンタル バランス チョコレート



「チョコレートの宣伝するより
自分の店の絵本の宣伝しろよ
!」


 


 

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Lilo Fromm / 
Hinterm Berge Abezee 


「家に帰っても、気分はよくならない…」

終業時間 まぎわに

突然

皆の前で


独(ひと)り言(ごと)を

呟(つぶや)いた君


    ♠

皆は聞こえなかったふりをしていたが

奇異な目でちらっと

君の様子を窺(うかが)っていた

    ♠

そんな君を放(ほう)っておけなかったが


その日、
私は

まだ仕事が残っていて

残業だった…

    ♠

君とすれ違いざま

私は言った

「ちゃんと寄り道せずに帰れよ!」と

    ♠

どうして
私は

こんなに感情的になっているのだろうか?

    ♠


だが、

そう言われた君は

驚いた様子もなく

何を思ったかは

その表情からは

まったく分からなかった…





谷山浩子「ねこの森には帰れない」

ねこの森には帰れない
ここでいいひと見つけたから

ここはとてもいいところです
仕事をしています
恋もしました

ねこの森には帰れない
帰る道だって覚えてない

ねこの森には帰れない
失くした歌は歌えない








 

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