Quatre Saisons ~絵本と ことばと 恋バナと~

昔々、ある所に"アラン"という名の怠け者の子供がいました。 その子は、大人になると洋書の絵本屋になりましたが、宣伝も商売もうまくありません。 ある日、こわ~い鬼から言われました。「アラン、せめてブログぐらい書いて、自分の店を売り込め!でないと、おまえを食っちゃうぞ!」と。 アランは「え~、めんどくさ~い」と思ったのですが、食べられちゃっては大変です。 そんなわけで、ブログで自分とお店のことを紹介しなければならなくなったアランは…

2017年01月

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Inger & Lasse SANDBERG / Lilla Spöket Laban får en lillasyster


残って仕事してるのは
私ひとりだけのようだった

静まり返った部屋の中に
私の叩く
キーボードの音だけが
響いている

もう、これぐらいにして
そろそろ帰ろうか!?


そう思った時だった

うん?

廊下(ろうか)で何か
物音がしたような…

仕事で疲れ果てた
神経を集中させ
最後の力を振り絞って
耳を澄ませ

全精力を注いで
聴音装置ソナーに
耳を
傾ける
潜水艦乗りのように

全身を“耳”にして

   ♠

その物音は
こちらに向かって
近づいてくる


どうやら
誰かの足音のようだ

コツコツと

誰だろう?
こんな時間に
やって来るなんて

   ♠

そして
その足音は
私のいる部屋の前まで来ると
ぴたっと止まった

???

扉が
静かに開く

・・・


   ♠



そこに立っていたのは





君だった
  






 谷山浩子ここにいるよ

ささやかな 明かりだけど
わたし ここにいるよ

あなたが生きている
それが誰かをいつも
あたため 照らしてる
それを忘れないで





 

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Lilo Fromm / 
Hinterm Berge Abezee 


「家に帰っても、気分はよくならない…」

終業時間 まぎわに

突然

皆の前で


独(ひと)り言(ごと)を

呟(つぶや)いた君


    ♠

皆は聞こえなかったふりをしていたが

奇異な目でちらっと

君の様子を窺(うかが)っていた

    ♠

そんな君を放(ほう)っておけなかったが


その日、
私は

まだ仕事が残っていて

残業だった…

    ♠

君とすれ違いざま

私は言った

「ちゃんと寄り道せずに帰れよ!」と

    ♠

どうして
私は

こんなに感情的になっているのだろうか?

    ♠


だが、

そう言われた君は

驚いた様子もなく

何を思ったかは

その表情からは

まったく分からなかった…





谷山浩子「ねこの森には帰れない」

ねこの森には帰れない
ここでいいひと見つけたから

ここはとてもいいところです
仕事をしています
恋もしました

ねこの森には帰れない
帰る道だって覚えてない

ねこの森には帰れない
失くした歌は歌えない








 

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