君と
初めて逢(あ)ったのは
晴れた
土曜の午後だったね
明るい日差しの下
陽気な さざめきの中にいた
皆(みな)と一緒に
私も 君も
♥
そして
初めて言葉を交わした
その時
君は
少し お澄(す)まし顔
温(あたた)かな風に
髪を靡(なび)かせ
すぐに
身を翻(ひるがえ)して
君は
何処(いずこ)かへと
天女(てんにょ)が
失くした羽衣(はごろも)を
探すが如(ごと)く
まだ仕事が
残っていたから?
♥
しばらくして
のぞいてみた
事務所の中
日が傾き
薄暗くなった
室内には
影ひとつ
その華奢(きゃしゃ)な
現身(うつしみ)を
紺の制服に包み
窓辺の椅子に
腰掛けて
夕暮れの空を
ひとり
見つめていたのは
君だった
身動(みじろ)ぎもせず
ただ
じっと
見つめていた
窓の外を
暮れなずむ空を
♥
私は
そっと
君の傍(かたわ)らに立つ
「何か見えるのかい?」
振り返った君は
虚(うつ)ろな表情で
私を見る
私も また
黙って
見つめ返す
君の瞳を
不思議な静けさの中
見つめ続ける
まるで
月からのお迎えに
君が
連れ去られないようにするが如く
あるいは
西の彼方に
夕陽と ともに
消え入りそうな
君をつなぎとめる為に・・・
ふきのとう「柿の実色した水曜日」
覚えてるかな
逢った日の
空と山の色
柿の実色した水曜日
初めて君を見た
初めて恋をした